魔法少女リリカルなのはα's

2話 「夜明け(前編)」

 

 

 

The Prologue of ACES より)

 

 

 

『ちょっと東側よ、丁度町のはずれあたり・・・海岸線・・・』

 

緑色の三角の魔方陣から光を放ち、広域探査魔法で彼を捉えているのは、短くふわりとした金髪の若い女性。魔法陣の色のような緑の服をまとい、もう一人の仲間に通信・・・というよりも念話をしている。

 

『とても大きい反応よ、気をつけて』

『あぁ。・・・ん、あれか・・・?』

 

その念話に答えている女性は、赤紫の長い髪を一つにまとめ、颯爽と空を飛んでいる。手には剣を引っ提げ、凛とした表情―――その目は一つの人影を捉えていた。

そして、彼の前に降り立った。

 

「貴様のリンカーコアを頂く・・・勝負・・・!」

 

しかし次の瞬間、彼女は少し驚きの表情を見せた。

 

「子どもか・・・?」

 

その人影は、緑の女性からの念話―――とても大きい反応からとても想像できない程の、ただ10歳くらいの少年だった。

まさにその少年がカリブラであった。

 

 

 

                            ×                         ×                         ×

 

 

 

何か物騒な人が来たもんだ。逃げるなら、子どもだって油断してる今がチャンスだ・・・!向こうに急いで・・・!

 

「ッ!貴様!勝負から逃げるな!」

「ちっ!」

 

逃げようとした俺だったが、その女性が行く手を阻んだ。結構素早い・・・!

 

「一体何だってんだ!俺は勝負する気なんてさらさらないぞ!それにリンカーコアとやらって何だ!?俺は何にも持ってないぞ!」

「知らなければ特に知る必要はない。それに勝負から逃げるのは男らしくないのではないか?」

「・・・無茶苦茶だな・・・」

 

この人から恨みを買うような事は身に覚えがない。その前に、旅の途中で見かけた事すらない。

しかしこっちの事情なんかお構いなしで、この女性は迫ってくる。しかも、剣があるにも関わらず、パンチやキックといった肉弾戦。今は何とかかわせてるけど、威力は熊とか虎とかよりも強そうだ・・・。当たればちょっとまずいかも・・・。

 

「踊るのはここまでだ。観念しろ!」

「くっ・・・!」

 

気づけば俺は追い詰められていた。周りは壁と海。壁を登る暇はないし、海に入ると確実に足元を取られる・・・これが万事休すってやつか。

次の瞬間、女性の拳が俺の顔面を射ようとした―――俺は反射的に身構え、目を瞑った。

 

しかしその瞬間、俺の中に流れ込んでくる何かを感じた。その拳の衝撃とは違う何か、心臓の辺りから溢れ出しそうな何か、火山が噴火するような何かを。

俺が目を開くと、女性の拳は光の壁に弾き返されていた。

 

Guten Morgen,Meister.(おはようございます、マイスター)》

「あぁ、おはよう・・・ゲーヴェルト。・・・来てしまったんだな・・・」

 

その時、俺が俺ではないような気がしたが、しかしはっきりと自分の意思があることを確認できる。自分でもこの状況がどうなっているのかわからないが、もうすでに全てを悟ったかのよう。はたまた、喪失した記憶が一気に蘇ったような、そんな不思議な感覚に包まれた。

猛獣と戦うとき以上に精神・肉体に緊張が走り、しかし異様なまでに落ち着いて、普段の翠の瞳は何よりも紅く燃えていた。

 

「何だと・・・!これは一体・・・!」

 

最初に俺を見た時とは違う彼女の驚き様。狸に化かされた様な、そんな表情。今までの凛々しさはどこへ行ったのだろうか、と言いたくなるくらい。

 

「手間を取らせるなよ。一気に決めて、早く寝たいんだ。大人しくしてれば、今までの奇襲やら無礼やらは考慮して、命だけは助けてやる」

 

もう、夜明けが近かった。

 

 

 

To be continued

 

 

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