魔法少女リリカルなのはα's
第4話 「苦しさと悔しさと」
「よせ、ヴィータ・・・退け・・・!お前の敵う・・・相手じゃない・・・!」
「ぐっ・・・!」
シグナムはヴィータに訴えかけた。ヴィータは、今の俺とシグナムとの状況を見て歯ぎしりし、悔しそうだ。
《Entwaffnen(武装解除)》
「帰りな。そのヴィータとかいうちびっ子のおかげで冷めちまったし、もう朝が来る。事情を聞くのは・・・また今度にしといてやる」
俺は甲冑を解き、また寝床を探しに、海を背にしてそこを離れた。
「畜生・・・何なんだ・・・」
ヴィータのつぶやく声が聞こえたが、放っておいた。
その後、街に向かって彼女たちは飛んでいった。そこに住んでいるのだろうか。
しばらく歩くと、丘の上にいい寝場所があった。不本意とはいえ徹夜状態だった俺は、横になると数分かからずに眠りについた。
夢の中―――俺は何を見ただろう。記憶に無い光景が走馬灯のように流れ出している。
しかしどの光景も、決して華々しいものや美しいものではなかった。
巨大な爆発、焼き尽くす炎、瓦礫に埋もれた人々、泣き声、うめき声―――そしてその後は、沢山の動かない人間と何も無い風景。
気持ち悪い、そういう程度じゃない。
見ていると命を吸い取られるような、自分も死んでしまいそうな、怖さのあまり目を閉じても目の前が真っ赤に染まる、そんな光景。
(あぁ・・・ぁ・・・)
頭の中でもまともに声が出ない。苦しい・・・心が痛い・・・!
助けを呼んでも誰も来ない、だって俺は一人だから。
「・・・いじょ・・・ぶ・・・大丈夫?」
そんな時に、かすかに声が聞こえた。
振り返ると、一人の女性がいた。群青色のさらりとした長い髪、落ち着きのある声。
今の病んだ俺の心を癒してくれる。
「これ、お守り。持っていって」
女性の手には首飾り―――ゲーヴェルトがあった。
「きっと・・・君に必要なものだから」
俺はただ、首飾りに手を伸ばし、それを受け取った。
すると、女性は寂しそうに微笑んで、どこかへ行ってしまった。
× × ×
シグナムとヴィータは、あるビルの上に辿り着いた。
そこにはあの緑の女性と、その横には蒼い狼がいた。
緑の女性はシグナムを見た途端、ひどく驚いた。
「シグナム、どうしたのその怪我!?」
「説明は後!シャマル、早く治療を!」
緑の女性、シャマルはシグナムに手をかざした。
すると手から光が放たれ、シグナムの傷が徐々に治っていく。
「それで、何があったの?」
治療を続けながらシャマルは尋ねた。シグナムとヴィータは、起こった出来事を全て話した。
「技を真似して・・・威力も桁違いですって・・・!?」
「厄介だな・・・シグナムが一撃とは・・・」
シャマルと蒼い狼(どうやら話すことが出来るみたいだ)は、その事実をにわかには信じられない様子だ。
「しかしあの力、蒐集すれば一気に頁が埋まる。何とかして手に入れたいが・・・」
「どうやんだよ、攻撃が通らないんだぜ?」
「シグナムの攻撃が通らないとすると・・・ヴィータのあの一撃を入れるか、相手が隙を見せるまでの持久戦か・・・」
「いや、恐らく無駄だ。あの目は・・・そういう気がする・・・。それに相手の攻撃力が凄まじい。ザフィーラ、お前の防御でも持つかどうか・・・」
「何だと・・・!?」
何とかしてカリブラのリンカーコアを手に入れたいが、現状ではかなり難しい。
シグナム、ヴィータの攻撃は通らない、防御力に長けている狼、ザフィーラでもカリブラの攻撃は防ぎきれないとなると・・・。
そこで、シャマルが一つの提案をした。
「皆で連携してやれば、駄目かしら?私が上手くやってみせるから・・・」
「3人でかく乱して、シャマルが蒐集・・・か」
「今はそれしかなさそうだしな。逃げ回るの、あんま好きじゃねぇけど」
「・・・心得た」
「さ、もう帰りましょう。傷もほとんど治ったし、それに、はやてちゃんが起きちゃうわ」
シャマルは話し合いをまとめ上げた。
そして彼女らは、このビルの街から少し離れた住宅街へ飛んでいった。
To be continued
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