魔法少女リリカルなのはα's

5話 「その出会いの温かさ

 

 

 

「・・・いじょ・・・ぶ・・・大丈夫?」

 

また声が聞こえる。今度は誰だ・・・。

俺は目が覚めた。すると空はもう朱色に染まりかけている。

そして隣には、女の子がいた。髪の毛を両端で結い、白い服を着た女の子。

ビー玉みたいな赤い玉の首飾りをし、肩には小動物を乗っけている。

見たこと無いな・・・イタチか?

 

「あぁ、この子?ユーノ君って言うの。フェレットなんだよ」

 

俺があまりにもじっと見ていたせいか、その女の子はフェレットの紹介をしてくれた。

そして心配そうに、俺に話しかけた。

 

「どうしてこんなところで寝ていたの?風邪ひいちゃうよ?」

「いや、それは大丈夫。慣れてるから・・・」

「慣れてる・・・?ずっとここで寝てるの?」

「え、あ、いや・・・俺、旅人って言うか何と言うか・・・。とにかく、野宿は慣れてるから大丈夫」

「どこから来たの?」

「さぁ。どこから来たんだろうねぇ」

「他に誰かいないの?」

「いない。俺一人」

 

何と言うか・・・よく話す女の子だこと。

 

「見たところ、私と同じくらいの歳だよね。学校は?」

「学校・・・って、別に行かなくてもいいじゃん。勉強するところだろ?」

「うん、でも友達もいるし、楽しいところだよ」

 

まぁそうは言われても、学校ってお金がかかるところだって聞いてる。

裕福な人が行くものだ。俺は、今日を生きるので精一杯だっていうのに。

 

「あ、今日の朝ごはん・・・」

 

俺はふと思い出して、昨日作っておいた朝食を出した。

しかし時間が経ち過ぎていて、腐ってしまっていた。

 

「はぁ・・・駄目だ・・・。また探しにいかないと・・・」

 

脱力感でさらにお腹が空く。昨日のあいつらのせいだ・・・!

今度会ったら、食い物の恨みは怖いってことを教えてやる・・・!

 

「あの・・・よかったら私の家に来ない?お腹空いてるならご飯もあるし。・・・えっと・・・よくわからないけど、このまま君のこと放っておけないもん」

 

彼女はそう言って、俺を誘った。良く言えば優しく、悪く言えばお人好し。

どちらにせよ、独り身の俺にはもの凄い抵抗があった。

 

「いや、食料くらい自分で探すし、それに俺はアンタに恩を売るようなことはしていない」

「恩って・・・そんなのどうでもいいの!困っている人は助けなさいっていうのは常識なの!」

「いや、別に困ってなんか・・・」

「さぁさぁ、早く早く!帰ったらユーノ君もお手伝いよろしくね!」

 

フェレットのユーノは、了解と言わんばかりにキュッと鳴いた。

そして俺は、半ば強制的に、その女の子―――高町なのはの家に連れて行かれた。

 

 

 

その日の夕食は、俺にとっては宝石のようなものだった。

いや、そもそもこれらが食べ物だということも信じがたい。

俺のこれまでの食事は、ただの食料としてのものだったが、皿に盛り付けられたこれらのご馳走は違う。もはや芸術の域。ショックのあまり、ただただ呆然としていた。

 

「どうしたの、カリブラ君?食べないの?何か嫌いなものでもあった?」

 

ご馳走を作ってくれたのはこの人、なのはの母親、桃子さんだ。

どうやってこんなに凄い料理を作ったんだろう・・・。

 

「あの・・・何か魔法を使いましたか?」

「えっ、魔法?」

 

桃子さんはきょとんとした。

 

「こんなご馳走、見たことない・・・料理魔法とか使えたりするんでしょうか?」

「りょ、料理魔法って・・・そんな魔法は使ってないわよ。ただ普通に料理しただけよ」

 

魔法じゃないのか・・・だったらなおの事凄い!

 

「魔法だなんて、面白いことを言うね。確かに、魔法と言われれば・・・そうかもしれないな」

「母さんは、フランス・イタリアで修行してたからな」

「お兄ちゃん、それはお菓子職人としてじゃなかったっけ?」

 

なのはの父親の士郎さんに兄の恭也さん、そして姉の美由希さん。

皆仲が良く、温かい。

 

「お菓子職人としてでも、料理は料理だろ?・・・あれ?食べないのかい?」

「あ、や・・・本当に食べてもいいのかな・・・って・・・」

「いいに決まってるでしょー。ほーら、食べないとお姉さんが取っちゃうわよー」

「駄目だよお姉ちゃん!」

 

こういうのが・・・家族?わからない。

わからないけど・・・いいなぁと言うか少し羨ましいと言うか。

そんな複雑な気持ちだった。

 

「いただきます・・・」

 

恐る恐る、その料理の一かけらを口に運んだ。

見た目から想像できるほど、いやそれ以上の味だ。

未知の味がしみこんだニンジンやジャガイモやサヤエンドウなどの野菜、軟らかく煮込んである肉が、今まで食べてきた味とまるで違う。

何と表現したらいいのか・・・きっとこれが“美味しい”ってことなんだろうな。

 

「これは、何て言う料理ですか?」

「それは肉じゃがよ。お気に召さなかったかしら?」

「いえ、そんな!美味しいです・・・!」

「そう、良かった!簡単なお料理で申し訳ないって思ってたんだけど」

「簡単・・・これが・・・簡単・・・」

 

二口三口といって、俺はもう夢中でご馳走に食らいついていた。

 

「凄い勢いだな・・・相当お腹が減ってたのかな・・・?」

「沢山食べてね。まだまだ作ってあるから」

 

きっと俺は、この味を一生忘れないだろうな・・・。

後から聞いた話、俺は用意された料理をもの凄い早さで食べたらしい。

 

そしてまた半ば強引に、高町家に泊まることになったわけで・・・。

ふかふかの布団なんて、逆に落ち着かない。

でも凄く温かくって、優しかった。

きっと明日にはいつもの生活に戻るけど、またこんなひと時があってもいいかなと思った。

 

To be continued

 

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